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「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」-ビジョン実現に向けた推進戦略とロードマップ-の公表
2022年、当会は「プラチナ森林産業イニシアティブ」を立ち上げ、昨年5月「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」を公表しました。公表以降、ビジョン実現に向けた議論、検討を重ね、この度推進戦略及びロードマップを取りまとめました。
「産官学民の総力を挙げて森林循環経済を実現」、「リサイクル&バイオマス化学の早期立ち上げ」、「木造都市の加速」、「儲かる林業の実現」を柱とする2050年までの推進戦略とロードマップを提案します。
今後、林業から木造都市、バイオマス化学等に連携した森林資源フル活用事業のケーススタディを開始するとともに、全国で展開する予定です。
「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」:https://platinum-network.jp/2023/05/23/16/26/
◆「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」推進戦略とロードマップ◆
1.官学民の総力を挙げて森林循環経済を実現
化石資源に替わり、わが国の森林資源を建築・エネルギー・化学産業などで有効活用するためには、民間企業の努力とともに政府はLCAや経済波及効果等を考慮し、GX戦略における重点施策に位置付け、省庁横断で総合的に推進する必要があります。また、森林資源フル活用事業は、地方公共団体のコーディネートや国民の理解・行動変容も期待します。
2.リサイクル&バイオマス化学の早期立ち上げ
リサイクルやバイオマス資源を活用した化成品生産は技術開発や実証から実用に向け早期に推進する必要があります。資源確保とともに既存設備の活用・連携等を考慮した効率的な体制の検討・構築が必要です。またコスト高に対し、リサイクルやバイオマス製品のユーザーの理解醸成、国による税額控除・公共調達・補助金・カーボンプライシング等市場創出策の具体化や、化学産業の脱炭素化に必要な低価格なグリーン水素の確保を官民で取り組む必要があります。(当会は、「環境・エネルギー産業イニシアティブ」を立ち上げ、グリーン水素確保も民間で推進する予定)
3.木造都市の加速
需要サイドでは、非住宅の施主や建築事業者に対する木造化・木質化のメリットの明確化と訴求が重要です。実際には木造建築物の寿命は短くありません。実態に合った木造建築物の耐用年数・償却年数の指標設定が必要です。また、国産由来の木材製品のCO2固定量を認証し、SHK制度でオフセットする新たな制度の創設を推進します。
供給サイドでは、建築基準法の改正等でさらに重要性が高まった建築部材強度の見える化、特に国産の製材でのJAS格付の普及が鍵となります。具体的には、無等級材に対するJAS材の優位性の明確化やJAS材生産コストの抑制にかかる制度設計に加え、民間サイドでもJAS材の積極的な活用が求められます。
4.儲かる林業の実現
木材需要の拡大を見据え、林業・木材産業の生産性向上、主伐・再造林を前提とした施業面積大規模化の他、地域が主導するバリューチェーンの構築や、金融との連携強化を一層推進・支援していく必要があります。この4点を踏まえた、「儲かる林業」の標準型事業モデルを提案します。
本モデルでは、わが国の森林・林業の現況、経済合理性、環境負荷等を考慮の上、10万㎥/年を原木集材(全量買取)するストックヤードを設定。ヤードを中心に、森林面積250ha/年を基準とした40年サイクルでの主伐・再造林を提案しています(1サイクル当たり10,000ha)。木造都市やバイオマス化学との連携に向け、隣接地での製材・チップ工場の設置やチップから液化等一次加工する化学プラントの併設も望まれます。
本モデルを踏まえた社会実装に向けた取組として、富山県西部では事業検討協議会が立ち上がり、ケーススタディのフェーズに入りました。本取組を皮切りに、今後全国での展開を図ってまいります。
5.2035年までパイロット事業を展開、2035年から本格的に事業展開、2050年にビジョン達成
ビジョンで定めた木材自給率100%、化生品の化石資源由来0%、9階建以下建物木造化・木質化100%、林業の再造林率100%を目標に、概ね2030年に目途に事業検討、制度設計を終え、2035年までにパイロット事業を展開、2035年以降本格的に事業展開、2050年にビジョン達成を目指します。
6.4倍の森林資源の需要増加は国産資源で供給可能、1割のCO2削減効果と4.7兆円の経済効果
以下ビジョンで示した通り、森林資源の需要増は国産資源で供給可能であり、大きなCO2削減効果と経済効果があると試算しました。今後はモデルケースを設定し、従来の化石資源を活用したケースと比較したLCAや地域経済波及効果を試算します。
①バイオマス化学や木造都市の進展で森林資源の需要は1 億4,500 万㎥/年程度と現在の約2倍となるが、潜在成⾧量などから国内の森林資源で供給可能と試算しました。
②現在(2020 年)のわが国のCO₂排出量の約1 割に相当する約1 億tのCO₂排出削減が見込まれます。
③国内資源のフル活用とリサイクルの推進スギ花粉対策の効果で4.7 兆円の直接的な経済効果(付加価値増)が見込まれます。