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「望ましい営農型太陽光発電」の社会実装にむけた政策提言の公表
2026年4月、当会は再生可能エネルギー産業イニシアティブ内にて「営農型太陽光発電 社会実装推進コンソーシアム」を立ち上げました。営農型太陽光発電の健全な普及拡大を目指し、農業者に加えて農業機械メーカー・エネルギー・金融・流通・大学・研究機関・自治体等が協働し、地域ごとの最適解を導く“横断型プラットフォーム”として活動してまいります。このたび、コンソーシアム活動の一環として、「望ましい営農型太陽光発電」の社会実装に向けた提言をとりまとめました
~農地の価値を高め、食料安全保障とエネルギー安全保障を同時に強化するために~
1.はじめに
営農型太陽光発電は、農地における農業生産を継続しながらその上部空間を活用して再生可能エネルギーを創出する仕組みであるが、これは単なる太陽光発電の一形態ではなく、農業経営の安定化と発展、農地の維持・再生、地域のエネルギー自給、農業・農村の脱炭素化、さらには食料安全保障とエネルギー安全保障を同時に高め得る、わが国にとって重要な政策手段である。
令和8年4月15日に開催された「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」(以下、検討会)第6回会合において、営農型太陽光発電に関する制度見直しの内容が了承されたが、同検討会の議論は、不適切な案件への厳格な対応を求める一方で、営農と発電が真に両立し、地域活性化に資する取組については推進する方向性を示している。
本提言は、この検討会における議論を踏まえ、営農型太陽光発電をめぐる制度見直しが、不適切な案件の排除に向けた単なる規制・規律強化にとどまらず、農業・農村・地域エネルギー政策を結ぶ前向きな社会実装の基盤となるよう、必要な政策措置を提案するものである。
提言1:「適正化」と「推進」を一体化した制度設計とすること
営農型太陽光発電をめぐる制度見直しの目的は、不適切案件の排除に加え、農業との両立が図られ、地域活性化に資する望ましい取組を社会実装することに重点が置かれるべきである。そのため、国は「望ましい営農型太陽光発電」の基準を明確化するだけでなく、その基準を満たす案件を積極的に推進する制度を整備すべきである。望ましい案件について、①地域計画において10年後の農業を担う者として位置づけられている生産者とその生産者が営農する農地、②地域計画において10年後の農業を担う者として位置づけられている生産者が新たに営農する農地、③地域計画において10年以内に離農する可能性のある生産者とその生産者が営農する農地、④地域計画において10年以内に離農する可能性のある生産者が営農する農地とその農地で新規就農される生産者、の場合において、農地一時転用許可や設備整備計画認定の予見可能性を高めるとともに、自治体の離農対策・耕作放棄地対策・温対法・地域脱炭素計画等とも連動させるべきである。
具体的には、「望ましい営農型太陽光発電」の基準を満たす設備で発電された電気を自治体関連施設で優先的に活用する等の施策を検討いただきたい。
制度の姿勢としては、「悪いものを止める」だけではなく、「良いものを伸ばす」ことを明確に打ち出すべきであり、営農型太陽光発電を農村地域における再生可能エネルギーの中核的な実装モデルとして位置付けることが重要である。
提言2:市町村による地域農業の特徴・特色を活かしやすい制度設計とすること
営農型太陽光発電の技術は今後も進化していくことが見込まれ、可動式架台、垂直型設備、細型モジュール、透過型モジュール、ペロブスカイト太陽電池など、従来の遮光率のみでは適切に評価しにくい技術も登場している。市町村が作成する農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画でこうした技術革新を事前に想定した運用をすることは困難と考えられることから、対象圃場における単収8割要件と連動し、日射量シミュレーション等を踏まえた対象圃場における日射量減少率等の新たな指標を導入し、この考え方を国の基本方針の中で明確に位置付け、技術革新を阻害しない運用とすることが必要である。
提言3:対象作物を限定しすぎず、地域性と販売実態に基づき評価すること
地域農業は多様であり、茶、果樹、露地野菜、施設園芸、飼料作物、花き、地域特産品など、地域の産業や雇用を支える作物は多岐にわたる。特定品目に偏った運用は、地域の創意工夫を損ない、営農型太陽光発電の可能性を狭めるおそれがある。
したがって、品目の可否は、品目名だけで機械的に判断するのではなく、地域での栽培実績、販売ルート、収益性、農業所得への寄与、地域農業政策との整合性、加工・貯蔵・流通との連携可能性を総合的に評価すべきである。
特に、乾燥、冷蔵、冷凍、加工、灌水、加温、貯蔵などの電力需要を伴う作物・経営体については、営農型太陽光発電による電力供給と組み合わせることで、農業経営の安定化と脱炭素化を同時に進めることができる。
単に「何を栽培するか」ではなく、「その作物が地域農業と地域エネルギーにどのような価値をもたらすか」を評価することが必要である。
遮光率や架台の最低地上高等の基準に関しても、果樹によっては、より高い遮光率の方が品質が向上するケースがあったり、架台を枝の支持に流用する場合は収穫等の作業時に人の手が届く高さが望ましいケースがあったりすることから、栽培作物の生育特性や実績に合わせて弾力的な運用設計をする必要がある。
提言4:農業者への利益還元を農業経営の強化につなげること
発電事業から営農者への利益還元について、単なる地代や協力金に限定されるべきではない。重要なのは、その還元が農業経営の強化、地域農業の維持、農地の価値向上に結びつくことである。具体的には、発電収益の一部を、農業機械、灌水設備、乾燥調製施設、冷蔵・冷凍設備、ハウス、鳥獣害対策、草刈り、農道・水路維持、スマート農業機器、電動農機、地域の共同利用施設などに充てることなどが考えられる。
また、農業用電力としての自家消費や低廉供給を、営農型太陽光発電事業からの利益還元の一形態として明確に評価すべきである。電気料金や燃料価格の上昇は、農業経営にとって大きなリスクである。営農型太陽光発電を通じて農業者がエネルギーコストを抑制できれば、農業経営の安定性は高まる。利益還元を「金銭の移転」だけでなく、「農業経営の強靭化」として捉えることが重要である。
提言5:農業の電化・脱炭素化・エネルギー自給を制度目的に明記すること
営農型太陽光発電の社会的意義は、売電による収入拡大にとどまらない。農業分野では、乾燥調製、冷蔵・冷凍、灌水、畜舎管理、施設園芸、加工、物流など、さまざまな場面でエネルギーが必要である。昨今の国際的なエネルギー資源情勢を踏まえると、農業における電化の促進と再生可能エネルギーの利活用による自給率向上は急務である。
したがって、営農型太陽光発電は、農業の電化・脱炭素化・エネルギー自給を支える政策手段として明確に位置付けるべきである。特に、農業機械の自動化、農業用ヒートポンプ、電動農機、灌水ポンプ、畜舎・園芸施設、ライスセンター、冷蔵・冷凍施設、加工施設などと組み合わせた案件、及び太陽光発電で生み出されるタイミングと消費されるタイミングのズレを解消するための蓄電池システムについては、重点的な支援対象とすべきであり、かかる技術開発への支援も必要である。
食料安全保障とエネルギー安全保障を同時に強化する観点からも、農業用電力としての活用を制度上高く評価する必要がある。
提言6:市町村に過度な負担を集中させず、国・都道府県による伴走支援体制を整備すること
新たな制度では、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画の作成や設備整備計画の認定において、市町村の役割が重要になる。しかし、多くの市町村では、営農型太陽光発電に関する技術的知見、作物別の栽培影響、発電設備の構造、安全性、金融・撤去費用、電力契約、地域合意の進め方に関する専門人材が不足している。制度上、市町村の役割を重くするだけでは、地域によって審査の質やスピードに大きな差が生じてしまう。
また、市町村において農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画が作成されなければ、地域の農業の特徴・特色を活かした営農型太陽光発電事業が出来ないことになるため、市町村による迅速な計画策定・整備も不可欠である。
検討会議事概要でも、既に一時転用許可実績がある市町村については、基本計画策定が適切になされるよう国が促すべきこと、市町村が単独で基本計画を作る場合でも、有識者に意見照会する手続きを定めるべきことが示されている。
したがって、国は全国共通の審査票、協議会運営マニュアル、遮光率・日射量の計算方法、地域計画における協議に際してのガイドラインやマニュアル、地域説明資料のひな形などを整備すべきである。併せて、都道府県単位で営農型太陽光発電の相談窓口または支援センターを設置し、市町村、農業委員会、農業者、事業者に対して技術的助言を行う体制を整えるべきである。
提言7:データベース化と実証研究を国の責務として位置付けること
営農型太陽光発電の制度運用を高度化するには、データに基づく評価が必要である。検討会議事概要でも、将来的に様々な取組が出てくる中で、エビデンスが蓄積されるようデータベース化していくことが望ましいと指摘されている。
国は、作物別、地域別、設備形式別の営農型太陽光発電データベースを整備すべきである。蓄積すべきデータには、日射量、設備形式、支柱間隔、最低地上高、作物、品種、収量、品質、販売額、農作業時間、機械作業性、発電量、電力利用形態、利益還元、地域合意、撤去費用、事故・災害情報なども広く含めていくべきである。
また、都道府県の農業試験場、大学、農研機構、民間事業者による実証研究を広く支援し、稲・麦・大豆以外の地域作物、条件不利地での営農、可動式・垂直型・透過型・ペロブスカイト等の新技術、農業用電力としての自家消費モデルについて科学的知見を蓄積すべきである。
このデータベースは単に行政組織や国立研究開発法人の内部で保有するのではなく、個人情報や営業秘密に配慮しつつ、農業委員会、市町村、研究機関、金融機関、事業者が活用できる形で公開・共有すべきである。こうしたデータに基づく制度運用こそが、営農型太陽光発電への社会的信頼を高める土台となる。
提言8:新たな制度の実施に向けた移行期間を十分に確保すること
制度の見直しにあたっては、既存案件への対応も重要である。新たな基準を導入する場合、既に事業化に着手している事業について、その予見可能性を損なわない移行措置が必要である。検討会議事概要でも、制度移行に向けては事業者の予見可能性を考慮した移行期間の設定が必要であると指摘されている。
営農型太陽光発電事業は、農業生産への配慮から農閑期の設備施工となるほか、協議の場などにおける話し合いも農繁期を避けることとなる。加えて、一時転用許可の取得は事業化の最終段階で行われるものであり、その前段では様々な協議・調整が重ねられることから、事業化の期間は野立ての太陽光発電などと比べて長期化する。
さらに、今後は国の基本方針に加えて市町村の基本計画に沿った形での事業化が求められることから、発電事業を計画する側にはそれに適応する準備期間も必要となる。これらを踏まえ、最低でも農山漁村再生可能エネルギー法に関する省令改正から一時転用許可の要件化までは、最低でも2年以上の移行期間を確保するべきである。
おわりに
営農型太陽光発電は、農地において農業と再生可能エネルギーのどちらかを選ぶものではない。農地の価値を高め、農地利用を拡大しながら農業経営を支え、地域に再生可能エネルギーを供給し、食料安全保障とエネルギー安全保障を同時に強化する仕組みである。不適切な案件の排除に加えて、農業者の所得向上、地域のエネルギー自給、遊休農地の再利用、農業の電化・脱炭素化に資する良質な案件については、積極的に推進する政策姿勢が必要である。
本提言は、検討会議論を踏まえつつ、営農型太陽光発電を農業・農村・地域エネルギー政策の交差点に位置付けることを求めるものである。不適切案件を排除しつつ、望ましい取組を推進するという両輪を確かな制度として実装することにより、営農型太陽光発電は、これからの日本の農村の未来を拓く新しい基盤となり得る。
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